小田急線の町田の2つ手前に鶴川という駅がある。
その駅から歩いて15分程のところに武相荘という
白洲次郎 正子夫妻が戦中から暮らし、現在は
記念館となっている邸がある。
(12~3年前私はそこを訪ねたことがあるが
休館日であったため中は見れなかった。)
その鶴川に著者の正子女史が東京から戦中に
居を移され、夫の次郎氏と生活を共にしていく中で
出逢われた人々や出来事を洒脱な筆致で描かれている。現在は大学や団地 商店街とにぎやかな
街並みであるが、当時は蛍が舞い 夏の夜は
虫の音があたりをつつみこむ里山だったそう
で 隔世の感というほかはない。
そんな鶴川を彼女の表現から想像してみるのは
楽しい時間であった。
鶴川日記は3部構成になっていて
2部には昭和53年ミセスという雑誌に連載された
東京の坂道というエッセイがそして3部には
「心に残る人々」というエッセイが
掲載されている。もう30年近くたつ文章であるし、1910年生まれの女史の文章であるはずなのに、リズムといい感受性の鋭い観察眼 その表現力には頭が下がる。
まるで博学の友人と会話しているように素直に影響を受けてしまう。
彼女を取り巻く絵画 骨董 文学の巨星たちの逸話も面白い。
なにしろ夫が吉田茂の懐刀 GHQが一目置いた白洲次郎なんだから
それだけでも半端じゃない。こんなにかっこいい女性は現在ではいるはずもなく
彼女と文学を通してふれあえることは無上の喜びである。
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